2015-12-23

孤独なオカメ男

オーストラリアで一般的に見られるオカメインコという鳥を2羽飼っている。正確には、同居人のリサが飼っていた所へ、ボクが寄生虫のように寄生したつもりが、逆に世話を任されるようになっただけなのだが、特別なつかれてはいない。リサがダイバーということもあるせいか、名前は「シーちゃん」「フグ」とついている。

シーちゃんは、海の "sea" から取った名で、白と薄いグレーの体色で白い鶏冠を持ち、オカメインコの最大の特徴とも言える頬紅を塗っていない「ホワイトフェイス」という配合種の雄である。
フグは流れ的に「河豚」から取ったと言いたいとこだが、伝説のK1ファイター「アンディ・フグ」から来ている。当時聞いた時の驚きは忘れられないが、グレーの体色で黄色い鶏冠を持ち、永遠に色褪せることのない橙色の頬紅を塗っている「ノーマル」と言われる種の雌だ。

フグは、生まれつきくちばしの上下がずれていてうまく噛み合わない。餌もシーちゃんと比べると上手く食べられないが、ずれていることで何より危険なのは、放って置くと伸び続けてしまう尖ったくちばしの先端が、下からえぐるようにぐるりと巻いて自らの喉へじわじわと襲いかかる事だ。もしもオーストラリアに生きていればと考えると、喉を圧迫されて苦しんだあげく、乾ききった土地に墜ちて骨になってしまう事を想像する。売れ残っていたのをリサがわざわざ選んで買って帰って来たらしい。

毎月フグを鳥獣医の所へ連れて行って、くちばしをニッパーでパチンと切断してもらう。この定期メンテナンスは、作業的には飼い主自ら出来ることなのだが、これがまた厄介なことに身体を掴んでトリ抑えると、多くのオカメインコはストレスで鼻を真っ赤にして「てんかん」を起こす。そのまま死んでしまう場合もあるそうだ。時間は短ければ短いほど良いとの事でプロにお願いしているのだが、この先生も数をこなす毎にレベルを上げている。今ではほんの数秒で始末出来るようになって・・・と先生の事を書いてると、おもしろエピソードが思い起こされてどんどん出て来てしまうのでまた別の機会に書こうと思う。

フグはさておき、実は真の問題はシーちゃんにある。いたって健康で、フグと一緒にいさえすれば、ウグイスを真似た「ホーホケキョ」の歌声が一日中鳴り響く。ウグイスの真似と書いたが、実際は「ウグイスを真似た飼い主の口笛の真似」というワンクッションがあるので、たまに本物のウグイスの声を聴く事があると、あまりの質の違いにびっくりする事もある程だ。数年前、その偽ホケキョが、セガトイズの大ヒット商品「夢ことり」のモデルになった。愛鳥家に大絶賛されたそうだ。家まで声を録りに来たメーカーの収録陣達は、オカメインコも「ホーホケキョ」と鳴くのだという事を最後まで信じて疑わず、熱心に辛抱強くマイクを傾け続けていた。ボクらは笑いを堪えながら収録を終えるのを待っていたが、まさか本当にオカメインコの鳴き声として商品化されるとは思っていなかったのだ。

どこかのご家庭で活躍中の偽ホケキョの映像はこちら。




脱線したが、フグがくちばし切りに出掛けると、一人でウグイスの練習を始める。どうやらウグイスに成りきる事がセックスアピールに繋がるという不純な教えをどこかで聞いてきたらしいが、昨日初めて何気なくリサの肩に置いてみた。すると一声も発しない。うざったくなるぐらいの存在感が微塵も感じられない。一体どうしたのか。それから数十分経っても黙ってじっとしている。ああ、これはフグの死を悟った(また間違っている)のだな。肩に乗せた事で、これからは飼い主を相方として生きていかねばならないという鳥生に入ってしまったのだなと思った。こんな小さな1羽の鳥からでも発せられる孤独感と絶望感は半端じゃない。これはいつか本当にフグが逝ってしまった時の疑似体験に他ならない。今にも自ら目を閉じてしまいそうな男の刹那さよ。

フグはもうとっくに平均寿命を超えている。