2013-11-21

生き物シャッフルなまけっと

生き物が好きで、その対象を何らかの形にしている人はたくさんいるらしい。

好きな生き物の形を緻密に再現しようとする人、特徴を捉えてそれを表現する人、生き物をそのまま利用する人、人という生き物は実にいろんな事をする。それを見て、カワイイ、カッコイイ、キモイ、綺麗、美しいなど、人という生き物は実にいろんな風に感じ取る。

そんな不思議な生き物たちが狭い空間内に詰め込まれてシャッフルされるという計画が立てられた。


生きものまーけっと
なまけっと


ボクはどういうわけか深海生物を作っている。自分になぜ作っているのかを問いただしても、いつも答えは返ってこない。しかし現に作ったモノが存在している。これだけでなまけっとに出展する条件はクリアである。

実はこのなまけっとというイベントには、ある経緯があった。

それまでの募集は先着順だったデザインフェスタ(以下デザフェス)は、2013年11月2日、3日開催のvol.38から抽選に変わり、その抽選結果が出たのは7月1日であった(たしか)。この時、それまでデザフェス常連だった多くの生き物系クリエイターたちが落選したのである。

そこで、デザフェス落選組がなんとデザフェスと同じ日の11月2日に向けてなまけっと計画を始動。あまりの勢いにボクは、落選させられた怒りや怨念が込められたイベントだと思ってそのような発言をしたが、主催者はキッパリと否定していた。これが7月10日のことだった。僅か10日足らずでイベントを企画して、既に多くの人たちの興味を惹きつけていた。この状況を見たデザフェス合格組はとても悔しがっていた。なぜなら、既に高額なデザフェス出展料を納付済みのキャンセルが出来ない状態で、今更なまけっとに出たいとは言えない状況だったからだ。これはボクも痛々しく感じながら様子を見ていた。


なまけっと告知
なまけっと告知


主催者から「ぜひ出展を!」と誘っていただいたのだが、なぜかボクは出展しようかやめようかとウジウジと悩んでいた。そして無駄に3日の時が過ぎ去り、ようやく「よし、出展させてもらおうじゃないか!」と決断し、勇んで申し込もうと思ったら、主催者によるアナウンスが響き渡っていた。


スペースが一杯になりました


なまけっととは別に「エアなまけっと」という企画もTwitter上で開催されていた。これはなんらかの理由でなまけっとに出展できない人たちのための「こんなことイイな、できたらイイな」といった妄想を発言する場であった。
こっちも面白そうじゃないか、と思って主催者に「では、エアなまけっとに出展させてください」と申し込んだ。すると、主催者にあるまじきとんでもない言葉が返ってきた。


出展していただけると思ってスペースをお取りしてあります


これはメールやDMではない。公開されてる情報なのである。色々あるだろう中で堂々とこんな事を発言できるのは素晴らしいと思った(ちょっと申し訳ない気持ちはあるが・・・)。
ということで、主催者のお気持ちを有り難く受け取り、出展することとなった。
本番まで約4ヶ月、なんでも出来てしまいそうなほどの余裕すぎる時間があるのだが、直前になってやはり追い詰められるハメになるのである。

さて、ここであえて主催者の紹介をしておきたいと思う。複数名によるなまけっと実行委員会があり、木登りヤギさん(以下ヤギさん)という女性がその長を務めている。どうやらホネホネ団という怪しげな団体に所属されてるようだ。
このヤギさんのTwitterによる猛烈ななまけっとアピールが始まるのである。宣伝や告知やクリエイターたちの作品の拡散などを、お客になるであろう人たちに向かって怒涛の如く攻め込むという ”女性らしい” ダイナミックな凄まじい行為であった。相当な人数の人たちがこれにやられてしまったことだろう。素晴らしいお勤めであったことは記憶に残っている。


一方、時間的に余裕のよっちゃんダイオウイカなボクら深海マザーは何をしてたかというと、寝ていたわけではなかった。

海底紳士スケおじさんからのグッズ案件」と「しんかい6500特別見学会レポーター義務」という重大任務を終え、自店の商品にドラスケを追加するという半ば強行的な「スケーリーフット一新」を行ってから、「クマムシvs極限環境微生物トークバトル会場物販」で思いもよらぬ本物のドラスケと遭遇して撃沈。なまけっとまで残り一ヶ月、準備期間としてはまだ十分な時間がある。さぁ、行こうかと思い立つと、「ジュンク堂池袋本店出店依頼」による納品で、残りは2週間強となっていた・・・・・・。
よっちゃんダイオウイカは海底に沈み、スカベンジャーたちにキレイサッパリ喰われてしまったのだろう。

ご存知の方もいらっしゃると思うが、深海マザーは生産性が低いことに定評がある。この時点でなまけっとに出せるまともな売り物がスケおじさんTシャツぐらいしかなく、展示品もなしだ。本当にボクも代表も顔が青ざめていたことだろう。
ここで救いの手となったのは、当日遥々遠方から来られるという、お店の常連であるピカゴロドンさん(仮名)の二言だった。

  1. 「フラフラなんです」
  2. 「コスプレはしないんですか?」

これで展示物は決まりだ。
何かが産まれるときは大抵こんな感じである。

早速、1 に対応するため、座れるモノを作り始めた。家具屋ですから。
出来たのがコレ、「スケの腰かけ」と名づけたがあまり浸透しなかった。

高さ2メートルの座れる熱水噴出孔
高さ2メートルの座れる熱水噴出孔

そして、2 の答えはコレ以外にあるわけがない。
「誰でもスケおじさん」と名づけたが、実は数ヶ月前にあの「海底紳士スケおじさん」ご本人がこういうのを望まれていて、名付け親も彼なのである。それがこの機会に出来上がることになった、という裏話がある。

誰でもスケおじさん
誰でもスケおじさん


イベント自体を盛り上げるために、宣伝も必死にした。

わざわざ月まで行ってチラシを貼ってきた
わざわざ月まで行ってチラシを貼ってきた

家具を全部質に入れて、その金でなまけっとへ乗り込む
家具を全部質に入れて、その金でなまけっとへ乗り込む


その勢いでなんとか売り物を仕上げることができたのが、当日の午前3時のことだった。




目覚めと同時に会場へ出展物を積み込んだ車を飛ばしていた。さほど緊張はしていなかったが、道中ではある不安要素との闘いがあった。
一つ目は「座れる熱水噴出孔」の搬入の時に、他の出展者に間違いなくジロジロ見られるだろうという事。二つ目は深海というジャンルがボクらだけだったという事だった。会場ではブース配置が哺乳類系とか虫系とかそれぞれジャンル毎に別れていて、もちろん深海は海系に所属する。一見自然な分類に見えるが、実際はそうではないということの自覚があった。その理由はスケーリーフットやチューブワームなど熱水噴出孔で生きる生物をモチーフにしていたからだった。これらは「化学合成生態系生物」と呼ばれ、ボクらの馴染み深い陸上の哺乳類や鳥類、浅い海の生物などの「光合成生態系生物」と呼ばれている生物とは区別されている。いわゆる深海魚というのも実は光合成生態系なのである。要するに光と闇が混在する空間で「アウェイ感」のようなモノを勝手に感じていたのであった。


会場へ入るとまだチラホラとしか出展者は見えない。ガランとしてかなり広く十分なスペースに見えた。しかし、入り口のところで既にスタンバってるお客さんが数名列を作っていた。

会場入り直後の景色
会場入り直後の景色


ボクらのスペースには椅子が2脚だけ置いてあった。机がない。そう、机をレンタルしないでやってみようという無謀な試みがあったのだ。そこに代表がブース名の書かれた紙を持ってふて腐れ気味に座っていた。もはやアメリカの囚人がいきがって写真を撮られてるようにしか見えない。

囚人52号
囚人52号

いったん囚人を収容し、「座れる熱水噴出孔」の搬入を開始するとすぐに、不安要素だったジロジロニヤニヤ攻撃を受けて足早に皆の前を通り過ぎた。そして手早くブース作りを終えて、完成したのがコレである。

深海マザーブース
深海マザーブース



ショボ...




机を使わずに魅せてやろうだなんて、能力もないのにやるもんではなかった。これなら普通に机を使った方が良かったかもしれない。「いや、挑戦することが大事なのだ」と「無能なくせに」という両者の葛藤が未だ収まることを知らない。このディスプレイから自分のやりたいことができていないという雰囲気がふんだんに出ていることは、経験不足のせいにしておこう。


いよいよ開場となる10時近くになると、なんだか熱気に満ちてきたような気がした。出展者も準備が整ったようで気合が入り始め、お客さんも別室や廊下で今か今かと空間をひしめかせているようだった。後で聞いた話だとお客さんは100人以上待っていて、なんと入場制限まであったようだ。


そして扉が開かれた。

開場と同時にドヤッと人が雪崩れ込む

この時間帯に突撃してくるお客さんは、事前にお目当てのモノがあった人たちがほとんどだっただろうと思うが、それにしても凄まじい人数と勢いであった。ボクらのブースは奥の方だったので、そんな様子をニヤニヤしながら余裕で見ている時間が少しだけあった。しかし、その流れがここに到達した時、このイベントの真の姿が見えてきた。


暑い(熱い)


なんだろうか、この暑さは。
もの凄い数の熱い視線がブースを突き刺してくる。汗(熱水)も噴出してダラダラと流れ落ちていく。人口密度が大変な事になっていて、ギュウギュウなりながらも商品は次々と見られては買われていく。これがなんと、午後1時ぐらいまで永延と同じ状態が続くことになった。
不安要素だった「深海」というジャンルに関しては、まったくもって関係がなく、ダイオウグソクムシはもちろん、スケーリーフットとスケおじさんの知名度が余りにも高くて驚いた。「深海展で見た!」などと言っていた人もいたので、今夏の特別展「深海」QUELLE2013による成果のようなモノなのかと思うと、全然関係ないけど少しうれしかった。

そんな人混みの中に、あくまでボクから見てのことだが、「こんなところで何を・・・」と思うような方たちが紛れていてとてもおもしろい思いをした。某研究機構の方や、某未来館の方、某宇宙の方などなど様々なジャンルの方たちがブースに近づいて来られたので衝撃を受けた。

その中でも最も動揺したのは某大型書店の女性副店長さんがいらしたことだった。実はこの方、ある書店内のあるフロアに科学的マニアックスペースを作り上げ、書籍と共にグッズなどを並べて展開されている。しかし、一見まったくそんなことをされるような方には見えなくて、今まで謎めいていたのだが、ここに来てやっと正体が少し見えたような気がした。

群集 「ガヤガヤ・・・」
代表 「(副店長を見て)オラッ来てんぞ!」
ボク 「えっ?あ、こんなところでなにをされてるんですか(笑)今日は偵察ですか?」
副店長 「いえ、個人的に好きなもので(ニコッ)」
群集 「ガヤガヤガヤ・・・」

いたって単純かつ直球な回答だが、何よりもその笑顔がボクの謎を解いてくれたのだった。そして去り際もニコやかに、人混みの中に消えて行かれた。


さて、例の「座れる熱水噴出孔」と「誰でもスケおじさん」はどうなったかというと、通常はこのように待機している。

待機中ですよ、紳士もなにもありません。
待機中ですよ、紳士もなにもありません。

座れること自体知らない人や、かぶれること自体知らない人、恥じらいなどで、座ってくれる人やかぶってくれる人は少なかったが、それでも中には必ずこのような奇特な方たちがおられるのである。もっとたくさん写真があったハズだが、見つかった中でひとまずみなさまの勇姿を拝借させていただく。








ここでロビンマスクみたいになってる代表があることに気が付く。
「座れる熱水噴出孔」と「誰でもスケおじさん」が出来上がるきっかけとなった人物、ピカゴロドンさんの事だ。この方は「人に話しかけられない症候群」のような症状が出てしまうらしく、ご本人も事前に悩んでおられ、いろいろと解決手段などを練ってあったのだが、あまりの忙しさにボクはその事を忘れ去っていた。

ハッとなって辺りを見渡すが、顔も見たことない人を見つけられるわけがない。きっと既に会場内に来られてるが、話しかけられないでウロウロされてるに違いない、と思いながらボクは一部の人しか知らないある秘密の目印の存在を思い出した。
それはこの海底紳士スケおじさんステッカーである。これをお持ちなことは知っていたので、どこかに貼っているに違いないという仮説を立てて探索を開始した。すると数分後、あまりの発見の早さに笑ってしまったが、案の定そのステッカーがすぐ目の前にあるではないか。すかさず「ピカゴロドンさんですね?」と話しかけるとニコニコしながらコクリと頷かれた。「お待ちしておりました。さあ、お疲れでしょうからコチラの熱水噴出孔に腰かけください」と言うと、思いもよらぬ行動が目に飛び込んできた。


ブン((・ω・`*≡*´・ω・))ブン


首は横に振られていた。
恥ずかしがっておられる・・・しかしよく考えたらこれはごく当たり前な結果なのである。それからしばらく同じ空気を共有した後にピカゴロドンさんはニコニコしながらペコリとして帰って行かれた。

そんなことよりも残念だったのは、ブースに並べられている深海生物商品のすべてはピカゴロドンさんは既にお持ちだったこと。要するにこのイベントのために「新しい売りモノ」を作って並べることが出来なかったということ。残念な思いをさせてしまったかもしれない、という残念感に包み込まれた。言い訳になることなど何もない、という事を普段から叩き込んであるせいか、どんどん絶望感が増していった。

そんなボクの水深を少し浅くしてくれたのは、ピカゴロドンさんが残していってくれたご当地土産だった。食事も摂らず、トイレにも行っていない体に、「キットカットあんこ味」を流し込む。

チョコじゃない

チョコだと思って食べると感覚がおかしくなる。食感や舌触りはチョコなのに、あんこなのである。しかし染み渡る。甘さが毛細血管を伝うように体の隅々まで染み渡っていくのが分かるのである。


夕方ぐらいになるとさすがに人も減り始め、といってもまだこんなに賑わっているのだが、場内の空気も少し緩み始めていた。

ニヤニヤ見ているお客さん
ニヤニヤ見ているお客さん
バケツ一杯あったスケーリーフットもカランとしている
バケツ一杯あったスケーリーフットもカランとしている


売れた。写真では結構残ってるように見えるかもしれないが、すごく売れた。来場者数も1300人超、満足度激高(当店調べ)と素晴らしい内容になったようで良かった。陸も海も深海も見事にシャッフルされた空間になっていたのは来場された方には感じられたと思う。不安だった「アウェイ感」など微塵も感じることはなかった。
それと残念ながら他のブースを見に行く余裕がなくてほぼ見られていないのでご紹介することができない。唯一買えたのはウニの殻に磁石がくっ付いた「ウニマグネット」のみであった。
しかしながら私的な大きな課題がいくつも浮き彫りになり、終わった時の達成感は残念ながらとても薄く感じられた。一番は ”魅せ方” の問題だっただろう。
帰りの車内で代表は口を閉じ、いろいろと察することのあるボクも何かを言葉にすることはなかった。この借りはいつか必ず返さねばならない(倍返しとかそういうのではない)。

来年は関西地方で「第二回なまけっと」が行われるそうだが、この第一回の盛況ぶりは受け継がれ、出展希望者も来場者ももっと増えることだろう。


最後に某売れっ子小説家さんにせっかく写真を撮って頂いたので載せておこうと思います。顔を隠す理由が見つからないのでお許しください。
なまけっと実行委員会と来場者のみなさまに深く感謝いたします。

有り難う御座いました (撮影:某売れっ子小説家)
左:代表 右:ボク
(撮影:某売れっ子小説家)