2016-09-24

砂煙の千葉県立中央博物館

こんなにも暖かいというのに、今日は珍しく東京の洒落た街で的屋をしている。ビールは売ってないが店の敷地内には冷蔵庫があり、冷えてもいないのに「冷えてます」という謎の張り紙がされている。さらには深海生物を模した派手なマグネットが冷蔵庫を覆っていた。

店番をしていると、奇抜な格好をした人や、どこの国から来たのかよく分からない外国人が前を過ぎていく。隣の店の主は急病で休みらしい。心配しながらも、代役の女性店番長がコンビニで買ってきてくれたグミをほおばっていた。グミなど子供のおやつだと言わんばかりの彼女は、ボクから無理矢理掴まされたグミにハマり、そうでしょうそうでしょうなどと笑いながら過ごしていた。そんな穏やかさを吹き飛ばすかのように、突如として辺りが砂煙に包み込まれた。気づくとそこにはマスクをしてキツい目を覗かせた年配の女性が改造ベビーカーに手を掛けて立っていた。

それ、全部いただくわ

彼女は冷蔵庫を一周してからそう言い捨て、モノも持たず、さらに高々と砂煙を巻き上げながらベビーカーと共に消えて行った。どうやら次の商品委託先は、D・原田さん(砂煙上げた人)率いるミュージアムショップにお世話になるようだ。


この夏、千葉県が熱い。千葉市にある千葉県立中央博物館では10年振りに深海展が催されるらしい。関係者にとっても念願の企画展ということで、展示やグッズはもちろん、全体のデザインもプロイラストレーターの友永たろさんが手掛けるなど、かなり気合いが入っている。これでは砂煙が上がっても仕方がない。


千葉県立中央博物館
驚異の深海生物―新たなる深世界へ―
2016年7月9日~9月19日

千葉県立中央博物館 驚異の深海生物 正面玄関の正面
千葉県立中央博物館
驚異の深海生物
正面玄関の正面


ボクは千葉県の漁師町でボーっと育ったが、千葉市には縁がなく、たぶん行ったことすらない。しかし故郷の県というだけで妙に親近感を覚えるもので、必然的にチカラも入るみたいだ。2ヶ月を超える会期だったが、シゴトもやり遂げたことだし、会期の終わりが近づく頃にごあいさつも兼ねて潜入することにした。


出発は日曜日。代表も一緒に行くべきであったが、若干健常ではなかったため、大事を取って一人で車に乗り込んだ。首都高を走り出すと、レインボーブリッジの虹をくぐるどころか、真っ黒に染まった空がどんどん迫ってくる。そしてとうとう雨までフロントガラスを叩き出した。臭い…臭うぞ……そう感じながらも湾岸を飛ばした。


D・原田さんより、事前に裏口から潜入せよとの指令があったので、真面目に裏口から潜入した後、真面目に玄関から潜入した。受付で甲殻類研究者の駒井智幸さんを呼べとの指令もあったので、真面目に駒井さんを呼んでもらった後、真面目に駒井さんを連れてきてもらった。(このくだりはよくわかりません)

チバテレビの取材で短パンを披露されてスターになったという噂の駒井さんに、たまたまテレビを観て駒井ファンになった女性の方がいますよと伝えたら、顔を覆い隠しながら「短パンがぁぁぁ!短パンのせいでぇぇぇ!」と照れていた。どんな女性なのかお伝えするのを忘れたが。
そんな短パン関連でなにかがあったらしき駒井さん(ここからは短パン王子と呼びたいが我慢)が、館内をガイドしてくださるというのでぜひ案内してもらうことにした。入場料は500円。安い。企画展だというのに安すぎる。これではふるさと納税にもならないじゃないかと、「私をスキーに連れてって」の純白のスキーウェアのような制服を着た受付嬢2名を睨みつけていたら、ペタッとTシャツの袖にナニかを貼られ、そのまま館の奥へと搬送された。

まずは、駒井さん達が論文を発表して新種記載されたという最近話題になっていた「ダイオウキジンエビ」というエビを見せてくれた。なぜかニヤニヤしていた、二人で。漢字で書くと「大王鬼神蝦」。いかにも厨二関係者にウケそうな和名だ。「これはまたすごい名前ですね…」と言うと、「これねぇ、こないだ某新聞を飾る予定だったのに、北朝鮮がぁぁぁ! 北朝鮮のせいでぇぇぇ!」と、博物館の中心でミサイル問題が一面を飾ったことを叫んだ。「キジン」もだんだんアッチの漢字にしか見えなくなってキタが我慢。

鎮座するダイオウキジンエビ
鎮座するダイオウキジンエビ


メイン展示コーナーへ移動すると駒井さんは、「今日はよく(お客さん)入ってるねぇ、うれしいねぇ」とすごく喜ばれていた。見渡すと確かに人は多いものの、標本は見放題、写真も撮り放題のように見えたが、同時に通常開館日の様子も見えたような気がして相槌を打った。

「テキトーにご覧になったら声かけてください」
「テキトーにみたらお声をかけます」
というテキトーな会話を交わし、テキトーにフラフラみていて、テキトーに熱水コーナーに差し掛かった瞬間マジになってガン見していたら、背後からただならぬモノを感じ、振り返ればヤツ…じゃなくて彼女がいた。

お茶でもしませんか?

D・原田さんのお出ましである。ちょうど口と喉と眼球がそこのシンカイクサウオ標本のようにシワシワになっていたので、すぐに噛みついてご一緒することにした。幸いなことに今日はベビー改造車を引いていないようだ。もしここであの砂嵐を喰らっていたら、全ての水分を奪われたあげくミイラ化して常設展示されるところだった。アブなかった。

館内のカフェの入口で待てと指令があったので、真面目に(略)。D・原田さんは「オシャレなカフェじゃないのよ」と恥ずかしがっていたが、確かにオシャレじゃなかった。しかしガラス張りの店内を覗くと、テーブル側の窓から見える景色は超深緑。草! 木! 葉っぱ! ちょっと東京では味わえそうもない魅力的な景観のカフェだった。そこへテキトーにフラフラしていたらしき駒井さんが現れ、さらにD・原田さんが現れ、集団カフェをすることになった。

こんな秘境の中に博物館がある あの池には何が棲むのか
こんな秘境の中に博物館がある
ネッシーでもかくまっていそうな池もある


アイスコーヒーで身体を戻していると、D・原田さんと駒井さんの異色デュエット曲「忙しいのはいいことよ」「忙しくなんてなりたくないのよ」が歌われていた。企画展始まって以来、超多忙で一日も休んでないそうだ。
そうですよねーとか言ってたら、突然D・原田さんが「お子さんは?」と聞いてきた。「いえ…」と答えた。と同時に空気がおかしくなるのを先読みして間髪入れず、「D・原田さんはすごく小さなお子さんいらっしゃいましたよね」と聞き返した。

孫です

ピキーーーーーン!

歳の計算が合わないと思ったでしょ

ドカァァァーーーーーーン!

D・原田さんはボクの爆死を確認すると、「駒井さんの奥さんって峰不二子に似てるのよ」と地雷を置いた。……この変態にして峰不二子アリ…いや…この奇人にして峰不二子アリ…あ、言っちゃった…いやいやなんて失礼な……気になる……と心の中でまんまと地雷を踏み、再爆死したのだった。


では館のバックヤードをご案内します。
駒井さんが張り切って言った。初めて通されるバックヤード、胸が高鳴る。D・原田さんもパーティーに加え、洞窟のような通路をひたすら歩いた。途中で洞窟内に住んでいる地底人のような人に出逢い、駒井さんはボクを紹介してくださるも、その地底人は多彩な表情を繰り出すも声を発する事はなかった。長い年月、人と接しないで暮らしているせいか会話ができなくなってしまったのかもしれない(後に研究者だと知る)。
やっとの思いで奥底へ辿り着くと、そこには生物標本で埋め尽くされた図書館のような空間が広がっていた。焦点が定まらないまま呆然としている間に、D・原田さんは砂煙を舞い上げて姿を眩まし、駒井さんは召喚士のように次から次へと熱水に棲む生物標本を持ち出して来てくれた。最初に「熱水が好きです」とお伝えしてあったせいか、貴重(だと思う)なモノばかりだ。出よ、ヨモツヘグイニナ、アルビンガイ、巨大ユノハナガニ!

会いたかったヨモツヘグイニナ 手のひらぐらいの大きさでズッシリしている 殻頂の溶け具合も貫禄がある
ヨモツヘグイニナ
ズッシリ

アルビンガイも殻頂が溶けている 毛を撫でて遊んだ
アルビンガイ
モッサリ

ナギナタシロウリガイ おそろしくカッコいいフォルム 人が握るためにこの形に進化したとしか思えない
ナギナタシロウリガイ
ギュット

ラウユノハナガニ ユノハナガニを見たことあると巨大さにビビる
ラウユノハナガニ
(デカさに)ギョット

ぜんぶ触ってよいよ?(そのかわり何か作ってね)と仰るので、お言葉に甘えて触りまくっていた。しかし、熱水の神はアノ時のボクを赦してはいなかった。
マイマニピュレーターでシンカイヒバリガイを掴んだ瞬間、摩擦係数がゼロとなり、それはコンクリートの床に落ち、それから軽やかな音を響かせ、熱水の神は空間を支配した。

呪いだ……
これはあの時、あの場所で、あのカメラの前で、シンカイヒバリガイなんて掴みどころがない、コメントなんかしようがないなんて罵ったせいで呪われたんだ……
祟りだ……

と必死に呪いや祟りのせいにしてひたすら謝罪して懺悔した。
まったくもって幸いではないが、幸いなことにJAMSTEC様のような研究機関からの借り物ではなく館の所有物だそうで(もしかしたらやさしさでそう言ったのかも)、なぜかそこに置いてあった老眼鏡に異物感を覚えてビックリするも、ほんの少し安心したのだった。


問題のシンカイヒバリガイ 実は裏側が割れているのを隠蔽している いかにもすべりそうでしょ?
問題のシンカイヒバリガイ
実は裏側が割れていることを隠蔽したアングル
すべりそうでしょ?


一つの大罪を犯して希望を失ったボクは、当然のように駒井さんの研究室に収容された。大きなテーブルと本棚があり雑多だった。しかしおもしろそうなモノがたくさん視界に入ると、僅かに正気を取り戻していた。

黒スケーリーフット いまのボクの心を表しているように無惨ではないか… ねぇ、スケーリー…
黒スケーリーフット
いまのボクの心を表しているように無惨ではないか…
ねぇ、スケリン…

先にも書いたが、駒井さんは甲殻類の研究者だ。研究対象のエビなどが載った図鑑のような本を持ってきてくれ、ペラペラとページをめくりながら解説してくれる中、自分が描いたというエビの絵を指し、「絵が描けないと研究者はダメなんですよ」と言った。すると頭の中でボヤァァァとナニかがシンクロしはじめた。


   悲報  呪い
詰んだ まだですか
 論文   ダメ 研究者
  絵心ゼロ
 スケーリーフット        飛行機墜落
 15年 学名 ダメ
      Crysomallon

(わかる人だけへ)


もうダメだ…頭がおかしくなってきた…もう帰る…
ズタボロになりながら洞窟から生還すると、ミュージアムショップでD・原田さんがお客さんに声を掛けながら威勢よくグッズを売りさばいている姿が見えた。そうかあの砂煙はここへ繋がっていたのか。そういえば、先に潜入した同志が「ショップで深海マザーさん推されてたよ」と言ってたな。どれどれちょっと見てみ……


クマムシさんかわいいよー
ぬいぐるみかわいいですよー


_人人人人人人_
> クマムシさん <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄





千葉県立中央博物館、ミュージアムショップのみなさま、
お世話していただき誠に有り難うございました。

2015-12-27

かじかんだ手に温もりを

今日は北風が厳しくて、今年初めて犬の散歩中に手がかじかんだ。暖冬暖冬言っても寒い日はたくさんあるものだ。こんな日にはうちの暑がり犬、ボブがよく歩く。シベリアンハスキーの混血が噂されるボブは風が強ければ強いほど、吹いてくる方角へ向かっていくようにノンストップで突き進む。ボクは寒がりなので、肩をすくめたり、時たま後ろ歩きをして正面から風を受けないようにしながら付いていくのがやっとだ。ソリで引っ張ってもらいたいぐらいだが、多分ボクがソリに乗ったら一歩も歩くことはないだろう。

住宅街のあちらこちらで、「火のよーじん!カンカン」と人々が年の瀬を知らせている。狭い路地をカクカクと進みながら所定のAコースを歩き切り、休憩所であるいつもの小さな公園にたどり着いた。ボブが真っ先に向かったのは蛇口のある水飲み場だった。この乾燥ですばやく動けばやはり喉が渇くのだろう。とは言え、犬の水飲み場ではないので直接飲むことはできない。まずボクが蛇口をひねり、手を皿のように作って冷たい水を受け、そこに溜まった水をペロペロと飲むことになる。既にかじかんでいる手を見て少し躊躇ったが、蛇口を直接なめられては後の人に迷惑を掛けるので、仕方なく片手で皿を作って水を落とし始めた。

すると、どこからともなく「火のよーじん!」の行列が現れた。数十人規模の大行列だった。ボブはそれに気を取られて固まった。構わず冷水がボクの手を流し続けている。「早めに飲め」と言っても長い列をひたすら見ている。手はジンジンし始めている。列はまだある。もう手も厳しくなってきたし、もう飲まなくていいんだろうと思って皿を割ろうとした時、ペロッと一口だけ口をつけてそこを去った。この一口のために手を痛めたのか・・・。まあいいと思ってポケットに手を入れたが、まだ湿っているからか、なかなか温まってこない。そこへ、もう片方の手に持っているモノの存在に気が付いた。触ってはいないが、まだ生温かいような気がした。それはビニール袋に入った、さっき向こうでやってきたボブのモノだった。心の隙を突かれ、気付くとボクは、まんまるい月を見ながらソレを掴み、暖をとっていた。遠くの方でカーンカーンと心地よい音が鳴り響いていた。

2015-12-25

メニーメニーチキン

クリスマス・イブがやって来た。若い頃は、「日本人のボクには関係ないのにケッ」としか思っていなかったが、次第にその尖った精神も丸くなり、どうでもいいじゃないか、なんだか雰囲気明るいし、ケーキ食えるかもしれないしと、今では普通に楽しんでいる。とはいえ特別な何かをしているわけでもないが。

スーパーへ買い物に行くと、きらびやかにクリスマスコーナーが特設置されており、惣菜コーナーから精肉コーナーまで七面鳥で溢れていた。メニーメニーチキンだった。鶏肉を見てとっさに浮かべてしまうのが屠殺場だ。某大手鶏肉店に卸すための屠殺場で働いていた知り合いから、なかなかエグい話を聞かされて生命について考え込んだ事がある。今ではすぐに掻き消せるほどになったが、肉を見た時の一瞬だけはどうにも仕方がない。

それにしても、夕飯時を過ぎているにも関わらず大量に売れ残っている。そう言えばここへ来る途中、人気の鶏肉専門店がいつもよりも遅くまで片付けをしていた。客足がそっちに集中したのだろうか。個人的には小さな個人経営店なので応援の意味も込めていつもそこで買うが、今日はこのスーパーを応援しなければならない。と思いながらチキンを買って帰らなかった。昨日食べたばかりだったから。

今日売れ残ったチキン、明日もそのまま販売されるといいな。

2015-12-23

孤独なオカメ男

オーストラリアで一般的に見られるオカメインコという鳥を2羽飼っている。正確には、同居人のリサが飼っていた所へ、ボクが寄生虫のように寄生したつもりが、逆に世話を任されるようになっただけなのだが、特別なつかれてはいない。リサがダイバーということもあるせいか、名前は「シーちゃん」「フグ」とついている。

シーちゃんは、海の "sea" から取った名で、白と薄いグレーの体色で白い鶏冠を持ち、オカメインコの最大の特徴とも言える頬紅を塗っていない「ホワイトフェイス」という配合種の雄である。
フグは流れ的に「河豚」から取ったと言いたいとこだが、伝説のK1ファイター「アンディ・フグ」から来ている。当時聞いた時の驚きは忘れられないが、グレーの体色で黄色い鶏冠を持ち、永遠に色褪せることのない橙色の頬紅を塗っている「ノーマル」と言われる種の雌だ。

フグは、生まれつきくちばしの上下がずれていてうまく噛み合わない。餌もシーちゃんと比べると上手く食べられないが、ずれていることで何より危険なのは、放って置くと伸び続けてしまう尖ったくちばしの先端が、下からえぐるようにぐるりと巻いて自らの喉へじわじわと襲いかかる事だ。もしもオーストラリアに生きていればと考えると、喉を圧迫されて苦しんだあげく、乾ききった土地に墜ちて骨になってしまう事を想像する。売れ残っていたのをリサがわざわざ選んで買って帰って来たらしい。

毎月フグを鳥獣医の所へ連れて行って、くちばしをニッパーでパチンと切断してもらう。この定期メンテナンスは、作業的には飼い主自ら出来ることなのだが、これがまた厄介なことに身体を掴んでトリ抑えると、多くのオカメインコはストレスで鼻を真っ赤にして「てんかん」を起こす。そのまま死んでしまう場合もあるそうだ。時間は短ければ短いほど良いとの事でプロにお願いしているのだが、この先生も数をこなす毎にレベルを上げている。今ではほんの数秒で始末出来るようになって・・・と先生の事を書いてると、おもしろエピソードが思い起こされてどんどん出て来てしまうのでまた別の機会に書こうと思う。

フグはさておき、実は真の問題はシーちゃんにある。いたって健康で、フグと一緒にいさえすれば、ウグイスを真似た「ホーホケキョ」の歌声が一日中鳴り響く。ウグイスの真似と書いたが、実際は「ウグイスを真似た飼い主の口笛の真似」というワンクッションがあるので、たまに本物のウグイスの声を聴く事があると、あまりの質の違いにびっくりする事もある程だ。数年前、その偽ホケキョが、セガトイズの大ヒット商品「夢ことり」のモデルになった。愛鳥家に大絶賛されたそうだ。家まで声を録りに来たメーカーの収録陣達は、オカメインコも「ホーホケキョ」と鳴くのだという事を最後まで信じて疑わず、熱心に辛抱強くマイクを傾け続けていた。ボクらは笑いを堪えながら収録を終えるのを待っていたが、まさか本当にオカメインコの鳴き声として商品化されるとは思っていなかったのだ。

どこかのご家庭で活躍中の偽ホケキョの映像はこちら。




脱線したが、フグがくちばし切りに出掛けると、一人でウグイスの練習を始める。どうやらウグイスに成りきる事がセックスアピールに繋がるという不純な教えをどこかで聞いてきたらしいが、昨日初めて何気なくリサの肩に置いてみた。すると一声も発しない。うざったくなるぐらいの存在感が微塵も感じられない。一体どうしたのか。それから数十分経っても黙ってじっとしている。ああ、これはフグの死を悟った(また間違っている)のだな。肩に乗せた事で、これからは飼い主を相方として生きていかねばならないという鳥生に入ってしまったのだなと思った。こんな小さな1羽の鳥からでも発せられる孤独感と絶望感は半端じゃない。これはいつか本当にフグが逝ってしまった時の疑似体験に他ならない。今にも自ら目を閉じてしまいそうな男の刹那さよ。

フグはもうとっくに平均寿命を超えている。

2015-12-22

意味のある生き方

久しぶりに海岸へ行った。海も久しぶりだったが、広い場所自体へ来たのが久しぶりで気持ちよくて嬉しかった。空も地平線も海面も面白い。潮溜まりを覗き込んでみたり、岩の上を歩くのも楽しかった。下に目をやれば、よく見かけるパーツがたくさん落ちている。こういう貝殻がああなるのか、こういうガラスがあんな風になるのかと、磯拾い好きな作家が利用しそうな素材を拾っては捨て、また拾ってみては眺め、スペースデブリのような漂着物が視界に入りながらも、宇宙のような砂浜をただただ歩いた後、夕陽に背を向けた。

ボクの尊敬する人から、「意味のある生き方をした方がいいよ」と言われた。しばらく考えてはみたものの、結局いまの自分には「意味」の意味が分からなかった。それが「意味がない」ということなのかもしれないと思った。歳をとって少しは中身が詰まったと感じていたが、そんなこともまだ分からない若僧なのだと知った。知ったら、なんだか若返ってきたような気もしたが、相変わらずフィジカルとのバランスが取れない日々が続く。